2020年1月23日(木)

今回の卓話

「英語の語源を学べばわかる日本の古さ」

明治大学教授
織田 哲司

本日はお招きいただきましてありがとうございます。

今日は「英語の語源を学べばわかる日本の古さ」というタイトルで、英語と日本がどう繋がるのか不思議に思われるかもしれませんが、話が進むにつれて繋がっていくのが見えてくれば良いと思っています。

この会はいつもキャピトル東急ホテルで開催されているということですが、実はこの場所はパワースポットです。パワースポットというのは神様から良い力をいただける場所です。隣に日枝神社、総理官邸などもありますが、昔から日本人はパワースポットであることを分かっていて、重要な建物を建てていました。何故なのかというのは、これから徐々に話が繋がっていくと思います。

私の専門は英語の歴史で、1500年の歴史がある英語の、どの時代の文献も読めます。 そしてこの英語の歴史から、なんの関係もないような日本のことも見えてくるというのが分かってきたということをお話してまいります。

今日は普段英語とは縁のない方にも親しみのある単語で、この場所にも関係のある単語を探してきました。

まず、「soul」という単語、「魂」という意味です。日本語の場合、漢字は偏と旁から成り立っているので、肉月があれば身体に関係する漢字だということが予想できますし、自分でも分けてバラバラにすることができます。英語の場合も、語源を知るために分けることができます。この「soul」という単語を語源で分けると、「sou」と「l」の間で分けることができます。「sou」は「海」、「l」は「~に属するもの」という意味です。何故、魂は海に属するものなのかというと、イギリス人の祖先であるドイツの人々あるいは北欧の人々、特に沿岸部の人々は皆、魂は海から来て海へ還ると考えていたようです。このことを知った時に私は、日本と同じではないかということに気づきました。

キャピトル東急ホテルのある赤坂から銀座のあたりの縄文時代の地図を見ると、外堀通りは、昔は海の底で、日枝神社のある場所は岬の突端になります。かつて岬の突端だった場所は、多くの場合、現在、神社か寺か墓地になっているという特徴があります。何故かというと、先祖の魂は海の底に眠っていると考えられて、海に一番近い岬の突端で先祖のためのお祭りを昔から行ってきたからです。岬は魂に会える聖なる場所であり、魂は海に還ると日本人も思っていたようです。 「soul」の語源を調べていくと、あの世に対して日本人の祖先と同じような感覚を持っていたことが分かるということで、ご紹介しました。

地名も語源をたどると面白い発見があります。 何故「赤坂」という地名がついたかというと、この辺りは昔海の底でしたから、地面は粘土質の土です。粘土で作る埴輪でもお分かりのように赤っぽい土です。つまりこの辺りは赤い土の坂道だったので「赤坂」と呼ばれるようになったようです。赤坂の「坂」という言葉は「底」や「境」と関係があります。この世とあの世(異界)の境、この世とあの世をつなぐのが坂である、坂道の下にはこちらとは違う世界がある、ひょっとしたら神様がおられると、昔の日本人は考えていたようです。 

次の単語は「king」、王様です。この短い単語も語源で敢えて分けてみると、nの真ん中で分けることができます。「kin」と「ing」という成り立ちで、1000年位前までは「キング」ではなく「キニング」と呼んでいたようです。「kin」は一族や生まれを表し、「ing」は跡取りを表し、一族の跡取りというのが元々の意味でした。 一族の跡取りを一番大事にする家系は世界中どこでも王家です。この一族の跡取りから、リーダー、王様というように意味が変わってきたと考えられます。

ヨーロッパのさまざまな言語は、今から6000年、8000年前には一つのところの一つの言葉であったと考えられています。 その場所は、南ロシアのカスピ海と黒海の間にひろがるステップ地帯であったと言われています。このステップ地帯から、やがて西へ移動していった人々が今のヨーロッパの人々です。そして、東南の方へ移動していった人々がアフガニスタン、イランを経てインドの人々になりました。 よく考えてみると、南ロシアのステップ地帯はシルクロードの終点です。この地域から西に移動した人々はアルファベットの文字を使い、東に移動した人々は恐らく漢字を使っていたはずです。

先ほどのkinは一族や生まれを表す言葉でしたが、ガ行になるとgen(ゲン)となります。例えば、「generate」は「生み出す」という意味ですし、生み出された人々の集まり、「generation」は「世代」という意味になります。漢字でサンズイに「原」を書いた「源(ゲン)」という言葉も生まれを表しています。証明するのは難しいのですが、語源は同じだと考えられているようです。

ヨーロッパの王家の家系図では、先祖をたどると必ず神に繋がっています。父なる天の神と母なる大地の神が結ばれて生まれたのが王の先祖だと考えられています。考えてみると日本も同じです。天照大御神(アマテラスオオミカミ)から繋がっていると言われているのですから非常に似た考え方です。 ここで面白いのは、父なる天と母なる大地が結ばれて生まれた子供の末裔がこの世を治めるkingであるという考え方は、日本の王家(皇室)にも通じていることです。神武天皇の父親の家系は天の神です。最終的には天照大御神につながりますが、父親は天神です。一方、母親の家系は木花佐久夜姫(コノハナサクヤヒメ)につながる、大地系の神です。天と地が結ばれて、その結果生まれた王が日本を統べるという考え方です。 そして日本の天皇は、大嘗祭で天照大御神から霊性をチャージされて、治める力を得るという儀式を行っています。天と地の交わりから生まれた人がこの国を治める力を持つという考え方は西洋も日本も同じですが、大嘗祭のような天の力をチャージされるということが今でも続いている国、古代性が現代にも残っている国は日本だけです。

私の恩師の渡部昇一先生は、日本の歴史や政治評論などでも活躍されていましたが、元々は英語研究の専門家でした。私たちに「英語の古い言葉を勉強しているのは、それで良いけれど、いつかは日本に戻ってくるんだよ」とおっしゃっていました。こうしてみると、英単語の語源からイギリス人の先祖の世界観をうかがい知ると同時に、日本には古代性が残っているという、英語から日本の古さに繋がることができ、日本は歴史があって本当に良い国だということで、そのような話の一端をご紹介させていただきました。

ありがとうございました。

【卓話編集後記】
親しみやすい英単語を例に挙げて、言葉の成り立ちを解説していただき、語源を遡ると英語と日本語に共通点があることや、神話から読み解ける日本の皇室とヨーロッパの王家の共通点など、思いがけない発見がありました。 例会場のキャピトル東急ホテル周辺の縄文時代の地図を見ながら、地名の由来も説明していただきました。例会場周辺はパワースポットであるというお話に、参加した会員は新なパワーをもらったような心地になりました。