2022年10月6日(木)

今回の卓話

「GlobalのITとインド~60万人のIT企業で働く~」

日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社
代表取締役社長
垣原弘道

今日はお招きいただき有難うございます。

私の信条は日本が元気になるために働くことで、現在はタタ財閥の中のIT企業、タタ・コンサルタンシー・サービシズ、略してTCSで仕事をしております。

今日皆さんにお伝えしたいのはインドのタタ・グループ、TCSがどんな会社か、そして、なぜ私が、日本が元気になるために、競争力を上げるためにはインドとのコラボレーションが大切だと思っているか、なぜそこに意味があるかをお話ししたいと思います。

タタ・グループ、タタ財閥は150年の歴史がある財閥です。タタ家はペルシャからインドへ宗教的に逃れてきたので、迎え入れてくれたインドのために働くことを当初から約束しています。持株会社であるタタ・サンズの下に100社、タタ・モータース、タタ・スティール、買収したジャガーランドローバーなど約30社の上場会社があります。その中で50年前にゼロからスタートしたITの会社が現在のタタ・コンサルタンシー・サービシズです。タタグループ企業の持株会社のタタ・サンズの3分の2の株主はNPOのタタ・トラストであり、このタタ・トラストのオーナーがタタ家です。NPOで、医療・教育・環境・エンパワメントに年間200億円規模の寄付をしています。私自身もTCSに入社した時にサインをしたタタグループの行動規範の冒頭に、働くその地の人、社会のために働けと書かれていました。インドのためではありません。このような精神をグループで持ち、ビジネスで得た利益を持株会社を通じて社会に還元していることを誇りに仕事をしています。人々のタタ・グループに対する尊敬の念の理由の一つであり、ビジネスモデルそのものがSDGsと言われています。

TCSは時価総額約20兆円、ITでは世界のトップ企業の一社。従業員は60万人を超え、毎年更に増えています。日本TCSは従業員約3,000人、このほかにインド側で数千名が日本企業のお手伝いをしているので、合計9,000人以上で日本のお客様に向けてお仕事をさせていただいています。

インドには江戸から近未来までがあるとよく申し上げるのですが、様々な社会的な課題を抱えた江戸のような部分と日本のレベルをも超えた近未来までを持っている不思議な国です。インドは州の独自性が強く、民族も言葉も多様、私はEUと同じように、インドはインド・ユニオン、IUのような州、民族の連合体が一つの大国として動いていると思っています。

インドの人口は近いうちに中国を抜くと言われています。総人口の年齢中央値でみるとインドは25歳、アメリカと中国はその10歳上、日本は更にその10歳上という人口構成で人口構成ピラミッドを見るとため息が出るほど、これから世界でも最大の労働人口を輩出する国です。

また、インドが元気な理由はユニコーン企業の数にあります。世界で、アメリカ、中国に続いてインドからユニコーン企業が数多く生まれており、インドではテクノロジーをベースにした産業が大きく強くなっています。インドに生まれてインドの大学を出た人がグーグルやマイクロソフトのトップに登りつめ、NASAでもインド出身者が3分の1強を占めると言われています。

IT分野での日本の課題は、圧倒的な人材不足です。少子高齢化だけでなく理系、IT人材が圧倒的に不足しており、経産省の推計では近い将来45万人不足するとも言われています。今後日本でもITの高度化やデジタル・トランスフォーメーション、サイバーセキュリティなどが必須の状況下、日本の人材不足の問題に、私はインドパワーが貢献できるのではないかと思っています。

インドが輩出しているIT系の人材は、世界で奪い合いが起きており、多くの人材がアメリカに吸収されています。日本がその競争にもっと参加してこの人材を使いこなすことができるようになれば、日本企業がより元気になっていく可能性が拡大すると思っています。言葉や文化などの壁を乗り越えて、多様な人材や高度な能力を活用していくことがこれからの日本にとって必要だと思っています。

日本の企業の強みは、ものづくりや世界一の実行力といった自前主義で確立した良い部分がある一方で、多様な人材とのコミュニケーション、独自の文化、人材不足といった点で問題を抱えています。例えば製造業であれば、日本の強いハードの「ものづくり」とグローバルで鍛え上げられたソフトの「ことづくり」が上手に組み合わされることで日本企業に更なる成長の余地があるのではないかと思っています。TCSは日産自動車様向けに、自動運転、電気自動車などの開発を支援させていただいております。自動車のソフトウエア化の急伸の分野で私たちにお手伝いできる余地が多くあるということで、15年以上のお付き合いになります。日産様から見ると今や、アウトソースではなく、変動費のインソースのような位置づけだと私は思います。 日産自動車様とTCS の関係については、後述の日経ビジネスなどで取り上げていただいていますのでお時間あればご覧になってください。

TCSのビジネスモデルは、豊富な理系人材をトレーニングと経験を通じサービス化して外貨を稼ぐところから始まりました。TCSは機械工学、材料工学などITに限らず広く理系の人材を採用します。そしてグローバル大手企業から社内に足りないスキルをTCSで組み合わせてやって欲しいと依頼されます。例えば、求められた要件に沿ってメディカルデバイスの設計から試作までTCSで行ない、完成したら量産段階から依頼された企業に返すということも行っています。つまり、欧米の会社でも不足している理系の人材、スキルを揃えることで、欧米の会社が実現したいことをスピードを持って実行する黒子の役割を果たしているのです。

ただ、TCSはフロントに出てプロダクトを売る事業主にはなりません。企業の理系人材、その能力が不足するところをプロジェクトで補って実現するという、なかなか面白いポジションで世界中のニーズを満たしている存在です。

まだ日本でのブランドの浸透は十分でなく、皆さまにはTCSの名前は馴染みがないかもしれませんが、私の中では誇りに思える理念の上に立ったグループで働いていること、そして、付き合ってみると実は昭和の香りがするくらい生真面目で、日本が好きで、日本のことを本当によく勉強しているインドの人たちと一緒に、どうすれば日本をもっと元気にすることができるか考えて働いています。

本日は、有難うございました。

Q&A
Q:インドのIT関連の人材が日本を通り越してアメリカに行ってしまう状況を残念に思っています。日本にインドの人材が来るにはどうしたら良いかとお考えでしょうか。

A:やはり言語の問題から、インドの優秀な人材はアメリカなど英語圏に向かいがちですがインド人の中には、日本の文化が好きだという人も多くいます。現在日本に来ている700人くらいのTCSのインド人の多くは家族を連れてきており、子供も日本で教育を受け、所属を日本法人に変えている人も増えています。日本は安全で、住み心地の良い国、仕事があればより多くのインド人には来てもらえると思っています。 文化を越えた相手に対するリスペクトが大切なことは言うまでもありません。日本TCSには30カ国籍の社員がいますが、日本人とインド人だけではない豊かなダイバーシティの中で働く苦労と楽しさを経験することはキャリアのために良いよ、といって社員を励まし互いに学んでいます。

参考:
日刊工業新聞 2019年10月11日朝刊4面 『グローバルの眼』印タタ・グループのSDGs

日経ビジネス  2022年3月10日クルマ大転換 巨大化する車載ソフト開発に人材の壁日産はインドの巨人と組む

IT Media   2019年7月4日車載ソフトウエア  日産がクルマとソフトの両面を知る技術者育成を強化、研修施設を公開

※垣原さまより
「卓話の謝礼金はクラブの奉仕活動に役立ててください」
と謝礼の受け取りを辞退なされました。
垣原さまありがとうございます。当クラブの社会奉仕活動に活用させていただきます。