2024年4月25日(木)

今回の卓話

「世界に誇る日本のアニメカルチャー」

株式会社フジテレビジョン
ビジネス推進局次長統括 兼 アニメビジネスセンター室長
桑田 靖 様

株式会社フジテレビジョンのアニメビジネスセンターで責任者をしております桑田と申します。今日はお招きいただきありがとうございます。

アニメというと、皆さんどのようなイメージを持たれているでしょうか。古くは「鉄腕アトム」とか、週末の夕方には「ドラえもん」や「サザエさん」が放送されておりますが、私が担当しているのは、主に深夜のアニメ放送です。フジテレビの「ノイタミナ」の枠で放送されている「うる星やつら」や「るろうに剣心」、「+Ultra」の枠で放送されている「喧嘩独学」、そしてもう一つ「B8station」の枠では、中国のbilibiliというアニメ配信サイトで放送された人気のアニメを、日本語に翻訳して放送しております。近年、放送局はアニメに非常に力を入れております。海外でもアニメが盛んに取り沙汰される状況ですので、そういうところを含めて本日お話できればと思っております。

日本のカルチャーの代表的なものとして、アニメの他に、テレビゲーム、漫画が世界に通じるエンターテインメントになっています。アニメ、ゲーム、漫画は、産業面でも非常に親和性が高く、相互のメディア展開でビジネスの幅を広げています。漫画をアニメにしたり、TVアニメを映画化したり、ゲームをアニメにしたりとコンテンツを広げて、ビジネスの幅を広げている状況です。そして、音楽やファッションという分野にもクロスカルチャーのような形で、各分野のクリエイターが影響しあい、新たな文化を生み出すといった好循環が見られます。また、最近はアニメの声優が、舞台俳優になったり、バラエティ番組に出演したり、歌手デビューしたりと多方面で活躍されています。

なぜ、日本の放送局が中心となってアニメに注力するようになったかというと、インターネットの普及につれて、放送局の主な収入源である広告収入が減少傾向にあるためです。世界的なコロナ禍の巣ごもり需要で、家で見る動画コンテンツにアニメの占める割合が大きくなり、動画配信による収入の伸びが大きくなりました。日本は少子化が進んでいるため、国内市場だけでは頭打ちとなること、そして放送局は免許事業であるため地域ごとでの商売となり、拡大が難しいこと、こうした状況を打破するために目を向けたのがアニメの分野です。

世界でもアニメは大盛況で、国内外で非常に人気があるイベントがたくさん開催されています。Anime Japanは東京有明の国際展示場で開催され、毎年数十万人のお客さんでにぎわうイベントです。Anime Expoは、ロサンジェルスの広大な会場で開催されるアニメの祭典ですが、アニメのキャラクターの格好に着替えたお客さんで集まり、街中がアニメのお祭り状態になります。中国のbilibiliワールドというイベントは、Anime Expoと同じくらいの広さの会場で開催されますが、入場者があまりにも多いので一日の入場者数を制限して開催されているイベントです。クランチロールという北米を中心としたアニメ配信サイトが年に1回、アニメファンによる人気投票で大賞を表彰するイベントが、今年3月に東京で開催され、3400万人の投票の結果、日本の「呪術廻戦」が大賞となるアニメ・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。

アニメの産業市場についてお話いたします。2022年の資料によると、国内のアニメ産業は3兆円近い規模の大きな産業市場になっています。毎年右肩上がりで成長しており、2013年からの10年間でほぼ倍増しています。この内、制作会社の売り上げは10分の1程度ですが、日本から海外へのアニメ輸出が1兆4500億円とほぼ半分を占めています。注目したいのはこの海外の市場です。アニメより先に海外で普及した日本のゲームを見ると、日本の市場と海外の市場では比率が1対4で、海外が日本の4倍となっています。アニメはまだ1対1ですが、ゲームと相似形で成長していますので、まだまだ海外で伸びる素地があると考えて、放送局に限らずいろんな産業がアニメに参入しているのが現状です。

アニメの産業を見ると、海外では商品化、遊興費、配信などの合計で非常に大きなものとなっています。国内を見ると、グッズやアパレル、おもちゃなどの商品化、パチンコなどの遊興費、NetflixやYoutubeなどの配信などで好調な産業となっています。

日本の放送局が商売の中心にしている広告費をみると、国内の総広告費7兆円強の内、インターネットの広告費が3兆3000億円で、民放のテレビ広告費の倍となっています。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の広告費を全部足してもインターネットの方が大きいという状況です。広告費だけに頼っていると売り上げがなかなか伸びないので、インターネットや海外のアニメなど、他のものを探さなければならないところです。

アニメビジネスは版権利用が主なものになります。フジテレビで水曜と金曜の朝に1分ほど流しているアニメ「ちいかわ」を例にとると、アニメを流すだけでなく、グッズの商品化や配信で大きな収入をあげています。「ONE PIECE」や「SLAM DUNK」「鬼滅の刃」といったアニメは映画化されて、興行収入が100億、200憶となる非常に大きなコンテンツとなりました。

先日、アメリカのアカデミー賞の長編アニメーション部門で、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が大賞を取りました。3月に「ドラゴンボール」の作者鳥山明さんが亡くなった際には、ニューヨークタイムズや英国のBBCで速報として取り扱われたり、フランスのマクロン大統領から追悼コメントをいただいたりしました。さらに意外なことに、ヨーロッパや南米を中心に、プロサッカーチームのオフィシャルページに追悼メッセージが掲載されました。これは、日本の漫画やアニメがいかに幅広く世界に広まっているかを示す事例だと思います。

本日はアニメ目線からビジネス面を含めてお話いたしましたが、日本発のカルチャーとして、アニメが如何に世界に受け入れられているかを理解していただけたらと思います。そして、私たちも日本のアニメが、文化の発信として海外でエンターテインメントの王道を作れるようになったら良いなと思っています。ロータリークラブの皆様にも温かく見守っていただき、日本のカルチャーが世界に羽ばたけるように頑張っていきたいと思います。
本日はご清聴ありがとうございました。

Q&A

Q: 最近中国が色々とやってきている部分があると思いますが、日本のアニメが非常に魅力的で、伸び続けられている一番の背景は何でしょうか。

A: 日本型のアニメは、3Dのハリウッドのアニメと違い、漫画をアニメーション化したものが多く、その2次元の部分の表現手法として非常に優れている、先駆的な動きをしているということがあります。ただ、日本ではアニメーターを含めアニメを制作する人材が不足しており、かなりの割合で中国や韓国等の海外に委託しているという産業構造になっています。そういう中で、中国や韓国の方々が、日本のアニメーションに憧れて、追いつこう、追い抜こうと努力され、実力を着けた国々がアニメーションを自国の大きな産業にされています。アニメの先駆者としての日本を見習って、独自の産業が世界各国の国内で育っているのかと、個人的には思っております。