2024年5月9日(木)

今回の卓話

「スポーツの可能性 アスリートの可能性」

株式会社ASSIST 代表取締役
大津祐樹 様

ご紹介いただいた大津祐樹です。茨城県生まれの34歳元プロサッカー選手です。元々鹿島アントラーズの下部組織に所属していました。ロンドンオリンピックで日本代表として出場し、ベスト4まで進みました。海外ではドイツとオランダでプレーし、日本では柏レイソル、横浜Fマリノス、ジュビロ磐田、昨シーズン現役を引退し、現在、株式会社ASSISTの代表取締役です。

株式会社ASSISTは、浦和レッズの酒井宏樹と5年前に作った会社です。スポーツの価値を最大化させることをミッションとしています。僕たちはアスリートとしてスポーツだけやっていると言われがちでしたが、現役中からビジネスに対しても高い意識を持ってアスリートの価値を高めるところが大切だと考えて行動してきました。

事業としては大学生支援、小学生支援、オンラインコミュニティの3本の軸で展開しています。
大学生支援では、企業と、登録した1万人以上の大学生の就職のマッチングを行っています。大学のサッカー部員に対しては、プロ志望、デュアルキャリア、一般企業就職と色々な選択肢がある中で、企業紹介、ES添削、面接練習といったサポートを行っています。スポーツを続けているとビジネスに対して不安を抱く学生が多くいます。でも、今までのトレーニングや上手くなるための努力は社会に出ても同じだと話して、マインドを切り替えるサポートを行っています。
また、プロの選手をゲストに呼んで大学生がプロのマインドを聞ける機会を提供しています。小学生支援でも同じようにゲストの選手を呼んでオンラインイベントを開催したり、サッカー大会の主催や栄養セミナーなど、色々行っています。また、東京、大阪をはじめ各地でスポーツイベントを開催しスポーツの楽しさ、サッカーの楽しさを伝える活動を行っています。さらにeスポーツイベントを主催し、企業様のPRを含めてさまざまなところでマッチングができるような形をとっています。

この他に、銀座で売り上げ200億に成長した時計屋の取締役もやっています。僕がこのような形で、ビジネスで活躍することでアスリートの価値も高まりますし、近い将来、サッカーやスポーツをやることがビジネスにも通用することを証明できればと思って活動しています。

紹介はこのくらいにして、皆さんからのご質問にお答えしたいと思います。

■質疑応答
Q: アスリートのセカンドキャリアが問題になっていると思います。大津さんご自身は現役の頃から自分の将来をどのように考えておられたのでしょうか。

A: 僕の場合、セカンドキャリアをやりたいから、会社を作りたいからという意識で動いたわけではありません。現役中から、子どもたちや中学生、高校生、大学生にしっかりと伝えることはできないかと考えていて、その中で会社が必要だと感じました。セカンドキャリアの問題は、アスリートに対して、他のことをやってはいけないとか、スポーツだけに集中しろという文化があるからだと思います。プロサッカー選手がチームに拘束されて行う1日のトレーニングは、1時間から1時間半ぐらいです。短い時間で皆さん驚かれると思います。プロですから結果を残せばOKです。僕自身は、移動時間などに情報を仕入れたり、ビジネスを学ぶことなどに使っていました。でも世の中では、サッカー以外のことをやっているからサッカーに集中できないのだという意見が多いように思います。ただ、世の中はすごく変わってきているので、これからはスポーツ選手の形も変わってくるのかなという印象を持っています。

Q: ファウルについて、国によって色々あると思いますが、一番フェアな国はどこなのかお聞きしたいと思います。

A: フェアな国は海外にはあまりありません。そういう意味では日本が一番フェアだと思います。ただ、それが良いことなのかというと、少し疑問に思う部分はあります。僕はオランダとドイツでプレーしていましたが、トレーニングの時からファウルばかりで足は打撲であざだらけになるくらいの厳しい環境でした。日本もそのくらいになるとレベルも上がってくるかなと思っています。ヨーロッパのチームはレベルが高いのでファウルに近い動きはすごく多いという印象です。

Q: 学生にプロとしてのマインドセットを伝えているというお話でしたが、具体的にどのようなことを伝えているのか教えてください。

A: スポーツをやっている学生は全員プロのアスリートだと思っています。プロになれるかなれないかのところで、中学、高校、大学とスポーツを続けていくと、最後大学生で終わってしまいます。それは、プロゼロ年目でクビになった選手として扱っています。1年目でクビになった選手も5年目でクビになった選手もスポーツをやってきたことに意味があると伝えています。特にサッカーの場合はチームプレイでありながら個人の成績を求められるという部分でビジネスに似ています。自分と向き合うことや試合に出られなかったらどういう行動をすべきか、そして自己分析も必要です。中にはCレベルのチームなのにプロになりたいという大学生もいます。今の自分の状態が見えていないからこそ、そのような話ができるのだと思います。プロを経験した僕は、そこまで甘くない、プロになれるわけないという事実をきちんと伝えます。サッカーでプロになれないことを理解させることで、企業に入ったときに仕事において活躍する選手になるという学生もいます。マインドセットはそういったところが大きいと思います。学生に今の状況の理解と自己分析をさせて、ビジネスで通用するような人を作っていきたいという思いがあります。

Q: 給料をもらっている時点でプロですが、日本では労働者に甘い考え方になっています。大津さんは自分の会社で社員の指導で気をつけている点はありますか。

A: 会社に入ったら、サッカー選手が契約している状態と同じなので、結果を出すか出さないかが一番わかりやすい部分です。しかし、結果が出ていないからクビということはできません。僕は、結果が出ていなかったら、どこで結果が出ていないのか、不満があるならどこが不満なのかという点をしっかりと話し合って成長できるような形をとります。

Q: 裏話的な質問になりますが、夜遊びして注意されて退団する選手がいますが、チームの拘束時間が1日1時間とか1時間半なのに、なぜ夜遊びすると契約自体が追い込まれる状況になるのでしょうか。

A: 面白い質問ですね。確かに拘束時間は短いですが、チームというより個人として責任を持ってこそプロだという点が大きいと思います。僕も、夜遊びしながら当たり前のように結果も出す選手を何人も見てきています。夜遊びでリフレッシュして結果につながっているなら、それもありかなと思います。一番の問題はピッチに出てきたときにきちんとプレーできない場合です。サッカー界も変わってきているので、練習に来た時点でそういう選手はわかるので、周りから浮きます。ピッチ以外でどういう過ごし方をするかは個人の責任です。ただ、結果を出すことが一番大事なので、そのような選手に対してはチームメイトも怒って辞めろと言います。これはビジネスにもつながる部分だと思います。同僚が同じように夜遊びして仕事で結果を出せないようなら注意すべきだと思います。そういう環境が作れれば、より強い組織が作れると思います。

Q: 時計の会社に勤められるきっかけと、今までのキャリアをどのように生かされているのかを教えてください。

A: 元々はASSISTのスポンサーをしていただいた会社です。僕もずっと時計好きで、サッカー選手の時から、毎年活躍したら頑張って時計を買うことをモチベーションにしていました。ですので、時計の知識も非常にあります。時計の業界は非常に利幅をとってビジネスをしていましたが、この会社は利幅を圧縮して薄利にしました。薄利で正当に顧客第一のビジネスをするのがオーナーの意向です。なぜこの会社が成長したかというと、社員のほとんどがアスリートなのです。そういう中で僕を評価していただいて、取締役に就任させていただいたのが経緯です。全然世界は違いますが、やっていることはスポーツと同じでつながることはすごく多いと感じました。アスリートの可能性というところがあると思っていて、どの分野でもマインドが切り替わった時にはビジネスでも成功する人材になると思います。

Q: ジュビロ磐田の年棒を捨てて起業されたとき、勝算ありと思ったのか、また、一番実現したいことを教えてください。

A: 引退した時は契約があと1年残っていました。ただ、チームのことを考えると、僕の年俸で若い選手を5人雇った方が確実にチームにとって良いと考えて引退を決断しました。先のことはどうなろうとも、結果は出せると思っていました。勝算があるかというと5年前に会社を始めたときに勝算があったという答えかもしれません。

今後については、アスリートの可能性、価値を高めていきたいというのが一番大きいです。僕自身が社会に出て活躍すること、結果をしっかり出していくことでこういう人になりたい、サッカーをやってきたから意味があると思ってもらえるでしょう。僕はサッカーをやってきたことにすごく価値があると思っています。その価値を無駄にしないでほしいと伝えていければと思っています。スポーツから学ぶことは大きく、プロになってからでも、その後ビジネスの世界でもプロを目指せるという可能性と価値を作っていける人間になりたいと思っています。