今回の卓話
演題 「グローバルサウスと国際政治」
現在、世界ではウクライナ侵攻やガザ紛争など、悲惨な戦争が続いています。特に心が痛むのは、貧しい国での犠牲者の多さです。こうした現状を前に、我々は「自由でルールを守る世界」の実現を願いますが、それは容易ではありません。アメリカとその同盟国のみが「リベラルな世界」を形成する現状では、国際秩序はむしろ分断されつつあります。
ヨーロッパでは、NATOとEUが一体となり、ロシアや中国に対抗する「西側」としての結束を強めています。しかし、日本は西側諸国でありながらも、異なる文化的背景を持ち、伝統と近代のバランスの中で生きてきました。アジアとの連携を模索した歴史もあり、G7サミットにおいても、日本は欧米諸国と非欧米諸国を繋ぐ役割を担ってきました。
問題は、アメリカ中心の国際秩序に反発する国々が増えていることです。彼らは、ウクライナ侵攻やガザ紛争を、欧米の価値観や利益を押し付ける行為と捉えています。結果として、国際社会は「西側」と「非西側」に分断され、どちらの戦争の犠牲者に共感するかが、その立場を分ける指標となっています。
グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国は、かつて植民地支配を受け、経済的にも弱かった国々でした。しかし、第二次世界大戦後の独立と資源ナショナリズムの高まりを経て、力をつけ始めました。特に冷戦終結後は、市場開放とグローバリゼーションの流れに乗り、目覚ましい経済成長を遂げ、世界経済の重心を大きく変えました。
現在のグローバルサウスは、もはや欧米の支援を必要とするだけの存在ではありません。彼らは、世界経済の成長エンジンとなり、国際機関での影響力も増しています。中国やインドといった巨大市場を抱え、工業生産の中心地も西側から東側へと移行しています。これは、かつての「発展途上国」のイメージを覆す、大きな変化です。
しかし、グローバルサウス諸国は一枚岩ではありません。中国の影響力拡大が懸念されていますが、実際には中国は欧米諸国との連携が難しいため、グローバルサウスへの接近を図っているに過ぎません。グローバルサウス諸国は、それぞれの国益を追求しており、一枚岩になることは難しいでしょう。
さらに、グローバルサウス内にも経済格差が存在します。中国やインドなど経済成長が著しい国がある一方で、アフリカの一部地域では経済的な崩壊が進んでいます。グローバルサウスが一枚岩となり、欧米のような強固な協力体制を築くことは容易ではありません。
最後に、アメリカについて少し触れたいと思います。バイデン大統領の支持率は低迷していましたが、ここに来てカマラ・ハリス副大統領への支持が拡大し、形勢は逆転しつつあります。この変化は、今後の国際政治にも影響を与える可能性があります。もしトランプ政権が復活すれば、アメリカ第一主義が強まり、国際秩序はさらに混乱するでしょう。逆に、ハリス副大統領がリーダーシップを発揮すれば、国際協調路線が強化され、グローバルサウスとの関係改善にもつながるかもしれません。
グローバルサウスは、中国やインドの言うなりになる存在ではありません。彼らは経済力と政治的な流動性を持ち、今後の国際関係を大きく左右するでしょう。グローバルサウスとの関係構築は、日本を含む国際社会にとって重要な課題となるでしょう。日本は、これまで培ってきたアジア諸国との信頼関係を基盤に、グローバルサウスとの連携を強化し、多様性と協調を重視した新たな国際秩序の構築に貢献していくべきです。
本日は、グローバルサウスの現状と課題、そして国際政治におけるその重要性についてお話させていただきました。複雑化する国際情勢の中、日本がどのような役割を果たしていくべきか、皆様と一緒に考えていきたいと思います。ご清聴いただき、ありがとうございました。


