第1716回例会:2025年4月24日(木)

今回の卓話

卓話「自分をもっと輝かせる心と言葉の使い方 ~プロ野球名選手と中村天風の教えから~」

元NHKアナウンサー
渡辺弥生様

私はNHK静岡でアナウンサーを勤めたあと、フリーになり、プロ野球OBのイベント司会を24年間、日本代表のイベント司会を15年ほど担当しています。突き抜けて一流になる選手は何が違うのか気になり、多くの名選手に直接話を聞きました。そして気づいたことの一つが「心」と「言葉の使い方」だったのです。

今日お話するのは、プロ野球の名選手たちから学んだことと、哲学者・中村天風の教えを融合したものです。実は、あの大谷翔平選手の愛読書が中村天風の「運命を拓く」という本です。この本は宣伝していないのにAmazonで1位を何度も取るほど支持されています。

さて、ここでちょっとした実験をします。生のジャガイモと100円ショップのペラペラのストロー。この柔らかいストローを、硬い生のジャガイモに思いきり刺すと、実は簡単に通ります。でも多くの人は、通らないと判断します。そう思うと実際に通らなくなります。「無理だ」と思うと、その心の判断に体は瞬時に従ってしまい、ストローを刺す動きが鈍るんですね。だから通らない。逆に、「簡単に通る」と思えば、体は迷いなく動き、結果が変わってきます。
つまり、心の在り方が体の動き、そして結果を決めているのです。そしてそれに大きく影響するのが「言葉」です。言葉に心が反応し、体が従います。前屈する前に「柔らかい」と口に出すと、実際に柔らかくなります。寝転んで「重い」と言えば、持ち上げることができないほど重くなります。「軽い」と言えば、簡単に持ち上がるほど軽くなる。これらはすべて、言葉が心と体に与える影響を示す例です。

中村天風は「心が体を支配している」と説いています。川の流れに例えると、心が上流で、体が下流。心が思ったことに体は100%従う。だから、「できない」と思えば、体は「できない体」になってしまうのです。言葉は心に指令を出す手段です。だから「どんな言葉を使うか」が重要です。自分を輝かせるためには、常に、積極的な言葉を使うことです。怖いのは、冗談や謙遜でも心は信じてしまうこと。例えば「私、計算苦手なんだよね」と冗談で一度言っただけで、それが心に入って暗示となってしまうこともあります。そして自分が知らないうちに「自分は計算が苦手な人間だ」と思い込んでしまうのです。

さらに心は「誰に言っているか」も理解できない。上司に対して「あんな奴、左遷されろ」と言えば、自分が左遷されるような流れを引き寄せてしまう。冗談でも、マイナスの言葉は口にしてはいけない。では、どうするか。常に積極的な言葉を使うことです。そしてマイナスの思いが浮かんだら、積極的な言葉で上書きします。たとえば朝、「仕事に行きたくない」と思っても、言葉にする時は「今日は仕事に行きたい!」と言ってみる。心は嘘や冗談を区別できません。だからその言葉を真に受けて、体に「元気になる指令」を出してくれます。
心の特性を知って、それに振り回されるのではなく、操縦していく。それが中村天風の教えです。私たちは、自分の心の扱い方次第で、もっともっと輝くことができるのです。

プロ野球の中畑清さんのエピソードをご紹介します。中畑さんは巨人に入団してから3年間、全く芽が出ませんでした。ある時、長嶋監督から「調子はどうだ?」と聞かれて、「まあまあです」と答えたところ、土井コーチから「まあまあなんて言ってる奴を監督が使うか!嘘でもいいから“絶好調”って言え!」と叱られたそうです。そこから「絶好調」が彼の口癖になり、それに引っ張られるように結果が出るようになった。そして、あの明るいキャラクターでチームを引っ張る選手になったのです。
実際、中畑さんに「いつも絶好調だったんですね」と聞いたら、「何言ってんだ、打てない時の方が多かった。でも“絶好調”って言うと、なんか元気出たんだよ」と笑って話してくれました。

私たちも、「絶好調」といった積極的な言葉を口癖にしましょう。その積極的な言葉が、自分の心を変え、体を変え、未来を変えていくのです。自分をもっと輝かせるために、まずは日々の言葉を積極的なものに変えていきましょう。
さて、先ほどのジャガイモとストローの実験。「通らない」と思うと、実際に体が反応して、突き刺す時の動きが鈍り、通らないことをご紹介しました。ではなぜ「通らない」と思ったのか?生きてきた経験です。これまで生きてきた経験が「こんなに硬い生のジャガイモに、ぺらぺらのストローは通らない」と判断しています。生きてきた経験は大事ですが時々違っています。それは経験によって頭が固くなっている、見方が偏ったり狭くなったりしているということです。ですから例え「実現不可能」と思ってもやってみましょう。やってみないとわからないから。それもこのジャガイモとストローが教えてくれています。

そして私たちの経験は、私たち自身に「線」を引いています。これまで上手くいかなかった経験や、失敗したことなどさまざまな経験から「自分はこのくらいの人間だ」などと、自分に線を引いています。でも金田正一さんのように、プロ野球でも突き抜ける人たちは引いていません。自分で自分に線を引いてしまうと、その「線」を越えることは難しくなります。どうするか?高い目標を持つことです。思い切り高い目標です。「無理」と思ったら、ジャガイモとストローを思い出してください。やってみないとわからないから。

サッカーの本田圭佑さんやゴルフの石川遼さんなどの、小学校卒業文集をご紹介します。実現不可能と思えるような目標を書いています。でも全て実現しています。目標を卒業文集に書いたことで、心が捕まえた。心が目標を捕まえると、体はそれに従います。どうするか?・・・ものすごく練習したと思います。その練習が苦しくはない。目標に向かっていく練習なので、むしろ楽しい。目標が強ければ強いほど、体は従うので人の何倍も練習する。結果、目標が叶っているということになります。積極的な言葉に加え、高い目標を持つことです!それが自分をもっと輝かせるための鍵です。

では私たちはなぜ、自分を向上させようとするのか?それは自分を高めて、人のためになること、社会の役にたつためです。それこそが、宇宙の心と中村天風は教えています。
私たちは、積極的な言葉を使い、高い目標をもって自分を輝かせ、そして世の中の役に立つ人間となることを目指していきましょう。