今回の卓話
皆さま、こんにちは。シオザワと申します。本日は、ロータリークラブの皆さまに卓話の機会をいただき、大変光栄に存じます。テーマは「残る紙、伸びる紙、残したい紙」ということで、弊社の事業内容や、私が社長として取り組んできた変革についてお話しさせていただきます。
弊社は昭和12年創業の紙の専門商社です。私は凸版印刷に勤めていましたが、その頃は、父からは「凸版印刷の社長になってうちの紙を購入しろ」と言われていたものです。しかし、退職して家業に戻った頃、世の中はアナログからデジタルへと大きく移行し始めており、紙を取り巻く環境も大きく変化していました。時代の流れを感じ、紙の可能性を改めて見つめ直す必要性を感じました。
35歳の時、私は突然社長に就任しました。当時の会社は、金融危機の影響を受け、経営状況は決して楽観視できるものではありませんでした。トップダウンの組織体制も、変化の激しい時代には適応できないと感じ、組織の変革が急務でした。
そこで私は、まず全社員に「会社は社会貢献である」というメッセージを発信し、会社の存在意義を再定義することから始めました。アンケートを実施したところ、社内には「出る杭は抜かれる」という風潮や、職場環境に対する不満が多く存在することが分かりました。
この状況を打破するため、私は約2年間かけて社内の風土改革に取り組みました。ディズニーランドの事例などを参考に、社員一人ひとりが主体的に考え、行動できる組織づくりを目指しました。「ニコニコ運動」や「5S運動」を推進し、「自燃人(じねんじん)=自ら燃える人」を育成することで、組織全体の活性化を図りました。また、社員参加型の部長選挙を実施するなど、従来のトップダウン型組織からの脱却を図りました。
風土改革と並行して、経営理念の策定にも取り組みました。全社員で議論を重ね、「紙を媒体とした情報文化創造企業として、明るい、温かい、楽しい社会づくりに参加する」という理念を確立しました。また、「人とエコロジーの可能性に挑む」という21世紀ビジョンを掲げ、持続可能な社会への貢献を意識した経営を推進しています。
さて、本題の「残る紙、伸びる紙、残したい紙」についてですが、弊社では、情報を伝えるという紙の基本的な役割に加え、感情を伝えるという新たな価値を付加することを目指しています。デジタル化が進む現代において、情報伝達の手段としての紙は減少傾向にありますが、手書きの手紙や、思い出を形にする卒業アルバム、温かみを伝えるパッケージなど、紙ならではの価値は依然として存在します。
「残したい紙」としては、手書きの手紙の文化を大切にするため、社内で「文の日」を設け、全社員が手紙を書く取り組みを行っています。また、学校のスケッチブックでは、美術の先生と協力してカスタマイズするなど、文化としての紙の価値を守るための活動を行っています。卒業アルバムでは、祖父母向けの販売や、個別の写真データを反映させるなど、新たな付加価値を提供することで、需要の維持・拡大を図っています。
「伸びる紙」としては、パッケージング分野や、インバウンド需要の回復に伴う紙袋の需要増加などが挙げられます。また、旅行の思い出を形にするフォトブックも、デジタル写真の普及とともに需要が拡大しています。
これらの分野で共通して重要なのは、単なる素材の流通ではなく、企画力や提案力といった付加価値を提供することです。自分たちで新しい価値を生み出すことで、競合の少ないブルーオーシャンを開拓することができます。
その一例として、弊社では紙好きの女性社員が中心となり、「紙パネルラ」という自社ブランドを立ち上げました。これは、机に置くペーパーウェイトのようなもので、女性ならではの感性とデザインが活かされています。文具女子博に出展したところ、大きな反響があり、新たな市場を開拓する可能性を感じています。
また、教育分野では、大きな紙に自由に絵を描いてもらう「紙育」という活動や、企業から出るゴミを再生紙として活用する「マゼツクプロジェクト」など、紙の新たな可能性を追求する取り組みも行っています。機密文書リサイクル事業も、持続可能な社会への貢献という観点から、重要な事業の一つとして成長しています。
これらの事業展開を支えているのは、他でもない「人材育成」です。私は社員に対し、「T型人材」、つまり深い専門性と幅広い知識、そして豊かな人間性を兼ね備えた人材になることを求めています。知識やスキルだけでなく、人間性や創造力も重視し、自ら考え、行動できる人材の育成に力を入れています。「あなたは今燃えていますか?」というポスターを社内に掲示し、社員一人ひとりの意識改革を促すなど、様々な取り組みを行っています。
おかげさまで、弊社は時代の変化に対応しながら、新たな価値を創造し続ける企業へと成長することができました。これもひとえに、社員一人ひとりの努力と、紙に対する情熱の賜物であると深く感謝しております。


