今回の卓話
この貴重な機会をいただき、子どもたちの生活や施設の様子を皆さまにお伝えできることを大変嬉しく思います。以前よりバーベキューや芋掘り、ワクワクワークショップなど、東京山の手ロータリークラブの皆さまには子どもたちがお世話になっており、心より感謝申し上げます。
東京育成園には現在53名の子どもたちが暮らしており、最年少は3歳、最年長は17歳(今月18歳になる子もいます)。児童養護施設は、保護者のいない子どもや虐待を受けている子どもを養育する施設で、かつての「孤児院」から現在の形になりました。近年は虐待を受けた子どもたちの受け皿としての役割が大きく、児童相談所による保護の後、施設で適切な養育を行い、退所後の自立支援まで行っています。
児童養護施設の対象年齢は原則2歳から18歳ですが、現在は兄弟関係や子どもの状況に応じて柔軟に対応しています。18歳で成人を迎えますが、高校卒業までは施設に在籍でき、特別な手続きによって20歳を超えても自立できるまで生活することが可能です。これは、成人したからといってすぐ自立できるわけではないですし、近年は知的障害や心の病を抱える子どもが増えているという現状に対応するためです。
施設を退所する最も多い理由は「家庭復帰」であり、虐待を受けた子どもたちも親や家族と暮らしたいという気持ちを強く持っています。東京都では年間2万8000件近くの虐待相談がありますが、実際に施設に入所する子どもはその一部です。施設運営費の約98%は国や自治体からの補助金ですが、その約70%が人件費に充てられています。子どもたちの生活費は生活保護と同レベルの基準しかなく、習い事や部活動の費用を賄うのが難しい現状です。
東京育成園は明治32年に設立された歴史ある施設で、現在は東京都世田谷区にあります。子どもたちは11か所のホームに分かれて生活しており、小規模化が進んでいます。各ホームには男女混合で子ども6人、職員4人が共同生活を送っています。敷地外の住宅街にあるグループホームでは、さらに少人数の子どもたちが暮らしており、きめ細やかな支援をしています。
現在の児童養護施設業界のテーマは小規模化、多機能化、高機能化です。特に、発達上の課題や障害を持つ子どもたち、ケアニーズの高い子どもたちへの対応力強化が求められています。また、人材不足も大きな課題で、都市部では施設が足りず、地方では定員割れしているといった偏りもあります。
私たちは、様々な困難を抱えながら施設に来るしかなかった子どもたちを預かり、彼らのより良い未来のために日々尽力しています。施設での生活だけでなく、退所後の人生が豊かになることを願い支援しており、将来子どもたちが育成園のことを忘れても構わない、という思いで向き合っています。
【質疑応答でのやりとり】
Q.職員の勤務態勢はどのようにしているのですか
A.夜間の職員体制は、各ホームに毎晩1人ずつ宿直しています。
Q.退所後に戻ってくる子はどの程度いますか
A.家庭復帰後の再入所については、当園のデータでは11%というのがあるですが、東京都や全国での調査データが無いため、多いのかどうかは分かりません。
Q.どのように自立可能かどうかを見極めるのか
A.退所後の自立支援については、現在進学する子どもが非常に多く、高校卒業後すぐに就職する子は少ないのが現状です。施設退所後も世田谷区が用意した住宅に住みながら、職員が定期的に訪問し、生活状況を確認しながら自立をサポートしています。
Q.今、一番必要な支援はどのようなものですか
寄付に関して一番足りていないものは、トイレットペーパーなどの日用品です。現在はお米の価格高騰に頭を悩ませているところです。毎日のように消費されるものの寄付が最も助かり、その予算が浮けば子どもたちの特別な活動やクラブ活動などに必要な物品の購入に充てられるからです。
この講演を通じて、児童養護施設の子どもたちの現状と、私たちが直面している課題についてご理解いただけたことを願っています。


