今回の卓話
どうも皆さん、こんにちは。SMBC日興証券の青栁でございます。さて、卓話ということで、皆さま「金儲けの話をしてくれ」とおっしゃるのですけれども、私自身、株価は天気の雨や晴れのようなもので、勝ったり負けたりするもの。むしろ、どう負けないようにするか、という点が大切だと思っています。今日は「お金とは何か」、普段深く考えることのないテーマについて、皆さまと一緒に考えてまいりたいと思います。
■プロが語る「お金」の心理と裏側
まず、本題の前に、他に検討した「ちょっと気になるお金の話」をいくつかご紹介させてください。
■ 「7億ドルの男」大谷翔平が選んだ「手段」
さて、いよいよ本題です。大谷翔平選手がドジャースと結んだ7億ドル、およそ1,120億円という巨額契約を題材に、私たちがお金についてどう考えるべきかを掘り下げたいと思います。
皆さまもご存知の通り、この契約で最も驚くのはその受け取り方です。最初の10年間は年間200万ドル(約3億円)に抑え、残りの巨額を引退後に後払いで受け取るというスキームを選びました。
■経済学から見た「520億円の損失」
経済的に見ると、この後払い契約は、極めて不利な選択と言わざるを得ません。まず、複利効果です。もし彼が7億ドルを最初に一括で受け取り、アメリカの金利である年5%で20年間運用したと仮定すると、アインシュタインが「人類の最大の発明」と呼んだ複利の効果により、元本は2.6倍となり、18億5,000万ドルという天文学的な金額になっていた計算になります。彼はこの莫大な機会を放棄したわけです。
さらに、現在価値の概念です。将来にわたって受け取る7億ドルを、現在の価値に割り引いて計算し直すと、その価値はたったの3億4,000万ドル程度にしかなりません。つまり、大谷選手は経済的に見れば、約3億6,000万ドル、日本円で約520億円もの損失を承知の上で、この契約を結んでいるのです。なぜ、彼はこのような「損な契約」を選んだのでしょうか。
■お金以上の価値を優先した3つの戦略
私は、この選択の背景には、お金を「目的」とせず「手段」とする彼の明確な哲学があったと考えています。
■結論:私たちにとって「お金」とは何か
大谷選手は、「お金をどう使うか」「どんな目的で持つか」が明確だったからこそ、経済的な損失を厭わず、最も価値ある道を選択できました。翻って、私たち自身はどうでしょうか。将来の不安や備えという名目で、ただひたすらお金を貯め続け、最終的に通帳残高を最高額にしたまま人生を終えるようなことになっていないでしょうか。
お金は、それを持つことが目的ではありません。未来のために、お金を使って価値を生み出すこと、これが素晴らしいことです。最後に、皆さまにお伺いしたい。「未来のために私たちが今できる投資」とは何でしょうか。株式投資も不動産投資も、もちろん未来への投資です。しかし、ロータリークラブの米山記念奨学事業は、これらとは一線を画します。なぜなら、これは「人に投資する」事業であり、社会的にリターンを生み出すからです。
お金は手段であり、その先にある目的を見出すこと。今日の話が、普段あまり深く考えない「お金との向き合い方、つきあい方、使い方」を再確認し、より有意義な一歩を踏み出すきっかけになれば、これほど嬉しいことはございません。
ご清聴、誠にありがとうございました。そして、10月は米山月間でございます。この機会に、米山記念奨学事業へのご支援を重ねてお願い申し上げます。


