今回の卓話
皆様、こんにちは。NPO法人自立支援グループマーチの代表、吉田昌子と申します。
まずは、Togethersという素晴らしいイベントに毎回参加させていただき、子どもたち(青年たち)も大変喜んでおり、改めて感謝申し上げます。
本日は、私自身の家族と息子のこと、マーチがどうして始まったのか、そして現在行っている活動についてご紹介します。マーチは25周年を迎え、スローガンは「地域でこの先もずっと仲間と一緒に過ごしていく」です。
■息子と自閉症の診断、居場所づくりの必要性
1991年から9年間、夫の海外赴任先のタイ・バンコクで過ごす中で息子が生まれました。2歳頃に、目が合わない、コミュニケーションが取れないなどの異変を感じ、日本で自閉症スペクトラムと診断されました。
小学校入学とともに東京・江戸川区へ帰国しましたが、知り合いが誰もいない中、障害児を抱えての生活が始まりました。息子が養護学校に入学した後、「学校から帰ったら何もすることがない、余暇がない、仲間づくりができない、居場所がない」という現実に愕然としました。
私は元々ヤマハ音楽教室の先生をしていたため、「障害を持った子どもでも歌ったり踊ったり、リトミックは大好きだろう」と考え、2001年5月にサークルを立ち上げました。これがマーチの始まりです。
■マーチの主な活動とアート活動
【活動の柱 その1:ダンス・音楽パフォーマンス】
マーチのメンバーは、日頃は作業所や特例子会社などで働き、休日や就業後に集まって活動しています。人と合わせることが難しい青年たちですが、練習を重ねることで、パフォーマンスを披露できるようになりました。東日本大震災後の復興イベントなど、地域の団体や一般企業に呼んでいただければ、どこでも披露しています。彼らのパフォーマンスを地域の中で見ていただき、支援していただくことを目標としています。
【息子の才能とアート活動】
息子は自閉症で多動でしたが、唯一、絵を描くことだけが取り柄でした。細かい絵を得意とし、一度見たものを頭の中のカメラで撮り、何も見ずにコピーできるという才能を持っています。
近年、障害者アートが注目され、デパートやホテル、スターバックスなどで飾られる機会が増えています。息子の作品も、チョコレートのパッケージや子供服などに採用されました。障害を持っていても、デザインを通じて世の中に出ることができるという活動を、うちの息子だけでなく、多くのアーティストが続けています。
【活動の柱 その2:シンクロチーム「ウォーターボーイズ」】
2009年には、映画『ウォーターボーイズ』に着想を得て、男性ばかりのシンクロチームを結成しました。水に顔をつけることすら嫌がっていたメンバーが、楽しく活動を続けるうちに、全国シンクロのフェスティバルや大会に出場するという夢を現実にしました。
メンバーは8割が自閉症スペクトラム、1割がダウン症の方などで構成されています。シンクロの指導には、ウォーターボーイズの元コーチにも来ていただきました。
■モットーと私たちの使命
マーチのモットーは「人生を楽しもう」、そして「エンターテイメントでみんなを幸せに、みんなを笑顔に」することです。私たちが目指すのは、「障害を持っている割にはうまい」ではなく、「普通に感動した」という言葉をいただくことです。
彼らは、一般の子どもたちに比べて、大学進学や就職、家庭を持つといった人生の選択肢が少ないのが現状です。
だからこそ、家庭と職場と並ぶ「第3の居場所」を作ってあげることが私たちの使命だと考えています。この大切な仲間たちと、これからもずっと地域の中で一緒に笑顔で暮らしていけたらと願っております。
■質疑応答
質問: マーチさん以外にも他の活動をされていると伺ったが、ご説明いただけますか?
マーチ発足当時は福祉制度が整っていませんでしたが、2014年の法改正により、放課後等デイサービスという福祉事業が国の制度として発足しました。
これを機に、マーチでは18歳以下のメンバーを対象とした放課後等デイサービスを立ち上げ、現在江戸川区内で3か所運営しています。18歳を卒業したらマーチで活動を続けられるよう、切れ目のない支援のシステム作りを行っています。
質問: 他のクラブの発表やステージを見た時に、マーチのメンバーはどのような反応をするのでしょうか?
観客席では、もうノリノリになって舞台に駆け上がったり、一緒に踊ったりするほどです。この経験を積んだからこそ、他の人やイベントを楽しむことを共有できるようになったのだと思います。
また、先月は劇団四季のミュージカルをみんなで見に行きましたが、お母様方の心配をよそに、誰も声を上げることなく、静かに最後まで観劇することができました。これも日頃の積み重ねだと感じています。
質問: ウォーターボーイズは、週にどれくらいの時間練習していますか?
障害者シンクロには、「プール全面貸し切り」「音を出す許可」「多目的施設利用」という**「3つの壁」がありましたが、5年前にようやく区のスポーツセンターを貸し切ることができ、週に1回練習を行っています。
泳ぐことよりも、隣の人と気持ちを合わせてフォーメーションを移動させることが彼らにとって最も難しい部分です。そのため、想像ができない彼らのために、体育館などで図を書いて見える化**し、陸上での練習も取り入れています。
質問: ポストカードだけでなく、アート作品が商品化され、我々も支援できるような製品はありますか?
チョコレートやグミのパッケージ、企業のカレンダー、絆創膏のデザインなど、多くの作品が商品化されています。
ポストカードやノートは、国会議事堂の議員会館内のセブンイレブンで販売されており、そこは全国の障害者のアンテナショップのような役割を果たしています。動物園の売店など、販路も増えてきています。
マーチ自体では現在サイトでの販売は行っていませんが、イベントに合わせてテナントを出させていただいており、それが活動資金になっています。
本日は、ご清聴ありがとうございました。


