第1749回例会:2026年2月19日(木)

今回の卓話

ユニバーサル野球の軌跡

堀江車輛電装株式会社 代表取締役
堀江 泰 様

皆さま、こんにちは。堀江車輛電装の堀江泰でございます。 本日は、私たちが40周年記念事業として取り組んでいる「山手甲子園」の核となる、「ユニバーサル野球」についてお話しさせていただきます。
まず冒頭に、皆さまに知っておいていただきたいことがあります。現在、このユニバーサル野球は日本各地のロータリークラブで開催されていますが、そこで使われている野球場はすべて、堀江車輛電装が貸し出しているものです。私がここ東京山の手ロータリークラブの会員であるからこそ、この東京山の手ロータリークラブのユニバーサル野球のイベントを盛り上げ、成功させたいという強い想いを持っております。どうぞよろしくお願いいたします。

1. 奇跡の始まり:一通のメールと中村哲郎との出会い

このプロジェクトの原点は、今からちょうど10年前、私の会社に届いた一通のメールに遡ります。 当時、札幌で電気工事士をしていた中村哲郎という男から、突然メッセージが届きました。「御社のホームページを見て、『これだ』と思いました。どうしても社長に会いたい」という、あまりに唐突で熱烈な内容でした。
彼は募集もしていないのに、仕事の途中に会社を抜け出して東京まで飛んできました。そして2時間、自分の人生を障害者支援に捧げたいという熱い想いを語り続けたのです。「面白い男が来たな」と直感した私は、2ヶ月後に彼を採用しました。彼は家族を説得し、札幌から東京へ移住してきました。これが、ユニバーサル野球という物語の第一歩でした。

2. 脳性麻痺の少年が投じた一石

当初、私たちは障害がある方の就労支援をメインに行っていました。しかし、ある時、一人の少年からメッセージが届きます。彼は重度の脳性麻痺を抱え、普段は車椅子で生活している男の子でした。「僕は中日ドラゴンズの大ファンなんです。どうしても野球がやりたいんです」
通常、脳性麻痺で可動域がわずか数センチというお子さんの場合、周りの大人は「危ないから」「無理だから」と諦めてしまいがちです。しかし、私たちの会社は少し変わっていました。「彼がやりたいと言っているなら、どうにかして形にできないか」と考えたのです。
2017年から研究を開始しました。最初は傘の原理を使ったり、縄跳びの紐を使ったり。理学療法士の方々にもアドバイスをもらいながら、試作を重ねました。そして2019年、ついに段ボール製の巨大なスタジアム「ユニバーサル野球場」が完成したのです。

3. 究極の「ユニバーサル」を実現するテクノロジー

完成した野球場は、実際の球場の20分の1、バックスクリーンまで6メートルもある本格的なものです。この競技を支えるのは、私たちが特許を取得した独自のシステムです。

  • ターンテーブルと打撃装置: 障害がある方は、向かってくるボールに反応することが難しい場合があります。そこで、回転するターンテーブルにボールを載せ、自分のタイミングで紐を引いたり、スイッチを押したりしてバットを振る仕組みにしました。
  • 「1センチ」の可能性: 体のどこかが1センチでも動かせれば、ホームランを打つことができます。指、足、口、どんな部位でも構いません。「自分の力でバットを振る」という責任と喜びを、すべての人に提供することにこだわりました。
  • ガチンコ勝負: これは「福祉の体験会」ではありません。健常者の少年野球チームと対戦しても、ハンデなしで障害のあるチームが勝つことがよくあります。プロ野球選手が挑戦しても、タイミングを外されてヒットが打てないこともあります。そこには、同情も遠慮もない、純粋な「勝負」があるのです。

4. 松井秀喜氏も驚いた「ニューヨークの衝撃」

私たちの活動は日本国内に留まりませんでした。コロナ禍の最中、ニューヨークに住む日本人コミュニティから「ぜひこちらでも開催してほしい」と声がかかりました。私たちは自費で野球場をニューヨークへ運び、イベントを開催しました。
そこへ、元ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜さんがボランティアで駆けつけてくれました。彼も実際に打席に立ちましたが、なんと3打席立ってヒットはゼロ。あの松井さんでも打てないことがある。これこそが、ユニバーサル野球の面白さであり、公平さの証明です。現在、活動は全38都道府県、体験者は1万人を超えています。

5. 「山手甲子園」に向けた皆さまへの期待

そして2026年6月6日。いよいよ私たち東京山の手ロータリークラブの奉仕活動Togethersとして「山手甲子園」が国立オリンピック記念青少年総合センターで開催されます。
この日は、8チームが参加する大規模な大会となります。単にスポーツをするだけでなく、ロータリアン、学生ボランティア、そして障害のある方々が「ごちゃ混ぜ」になって楽しむダイバーシティの場にしたいと考えています。
皆さまに改めてお願いです。この事業を成功させるには、40名から50名のマンパワーが必要です。受付、ボールボーイ、バットのセッティング、そして会場の盛り上げ役。皆さまの力添えが不可欠です。
質問にもありましたが、今後はICTを活用し、病院のホスピスから出られないお子さんたちが遠隔操作でこの会場の試合に参加する仕組みも導入します。東京の会場と、病室、そして世界を繋ぐ。そんな夢のような光景が、もうすぐ実現します。

結びに:共に生きる、共に楽しむ

ユニバーサル野球のスローガンは「共に生きる」です。 誰かが誰かを助けるという一方的な関係ではなく、同じフィールドで、同じルールのもと、同じホームランを狙って一喜一憂する。これこそが、私たちが目指すべきインクルーシブな社会の姿ではないでしょうか。
6月6日は、ぜひ皆さまも全力で「ガチ」で参加してください。自分のチームを必死で応援し、一球の行方に熱狂してください。東京山の手ロータリークラブの40周年を、歴史に残る最高の笑顔で飾りましょう。
ご清聴ありがとうございました。皆さまの厚いご協力を、心よりお願い申し上げます。