第1771回例会:2026年9月17日(木)

今回の卓話

今日から実践できるスマホ撮影術

株式会社ブリッジ 代表取締役
フォトグラファー 工藤 ケイイチ 様

■はじめに

皆さま、こんにちは。株式会社ブリッジの工藤ケイイチと申します。本日はこのような素敵な会にお招きいただきまして、本当にありがとうございます。

私は普段、フォトグラファーとして、企業のプロモーション撮影を中心に、モデルさんやタレントさん、商品、料理など、さまざまな被写体を撮影しています。広告会社さんや企業の広報関係のお仕事からご依頼をいただくことも多く、食品メーカーさんやホテル、レストランなどで料理の撮影をすることもあります。

ただ、今日はカメラのお話ではありません。皆さん、普段スマートフォンで写真を撮られることが多いと思います。私自身も、仕事ではカメラを使いますが、日常生活ではスマートフォンで料理を撮ったり、家族の写真を撮ったりしています。

そこで今日は、皆さんがお使いのスマートフォンで、「いつもの写真がちょっと良くなる」撮影のコツをお話ししたいと思います。今日お伝えしたいのは、難しい専門知識ではありません。今日からすぐに実践できることばかりです。大きく分けて、「ピントと明るさ」「スマートフォンを構える高さ」「料理」「人物や子ども・ペット」の4つについてお話しします。

■1. ピントと明るさ

まず一つ目は、ピントと明るさです。スマートフォンのカメラは非常に優秀で、基本的にはピントも明るさも自動で調整してくれます。ただ、「ここを一番きれいに撮りたい」という場所があるときには、自分で指定してあげることができます。

画面の中で、ピントを合わせたいところを指でポンとタップしてみてください。例えば、手前のお花にピントを合わせて、奥をぼかしたい。あるいは、窓越しに見える景色を撮りたいのに、窓ガラスや室内にピントが合ってしまう。そういうときには、撮りたいところをタップするだけで、かなり変わります。

そして、もう一つ覚えておいていただきたいのが「明るさ」です。画面をタップすると、機種によっては太陽のマークなどが出てきます。その部分を指で上下に動かすことで、写真を明るくしたり暗くしたりできます。
・「ちょっと暗いな」と思ったら明るくする。
・逆に、「白く飛んでしまっているな」と思ったら少し暗くする。
これだけでも、写真の印象は大きく変わります。

■2. スマートフォンを構える「高さ」

二つ目は、スマートフォンを構える「高さ」です。スマートフォンは胸の高さで構えて、そのまま撮ることが多いと思います。でも、人物を撮る場合には、カメラの高さを少し変えてみてください。

スマートフォンのカメラは広い範囲を写せるようになっているため、近いものが大きく、遠いものが小さく写ります。上から撮ると、顔や上半身が大きくなり、足が短く写りやすくなります。逆に、人物の身長の半分くらい、あるいは少し下くらいの高さから撮ると、足が長く見え、顔も小さく写りやすくなります。

もちろん、上から撮ることが悪いわけではありません。小さなお子さんや、ワンちゃん、猫ちゃんを撮るときには、あえて上から撮ることもあります。大切なのは、「高さを変えると写真の印象が変わる」ということを知っておくことです。

■3. 料理をおいしそうに撮るポイント

三つ目は、料理の写真です。皆さん、お食事のときに料理の写真を撮られることも多いと思います。料理をおいしそうに見せるポイントは、以下の5つです。

① 立体感
② 質感
③ ツヤ
④ 水分
⑤ 色鮮やかさ

そのためには、光がとても大切です。できれば、窓から入ってくる自然光を利用してみてください。料理の真正面から光を当てるよりも、斜め後ろ、いわゆる半逆光のような位置から光が入るほうが、料理の凹凸やツヤが出て、立体感が表現しやすくなります。そして、料理を真上から撮るだけではなく、少し低い位置から撮ってみるのもおすすめです。パスタなら麺の立体感、お肉なら厚みや表面の焼き目などが伝わりやすくなります。

もう一つ大切なのが「近づきすぎない」ことです。スマートフォンの広角レンズは、近いものを大きく写す特徴があります。そのため、料理に近づきすぎると、お皿が歪んだり、手前のお料理だけが不自然に大きくなったりします。少し離れて、必要であればズームを使って撮ってみてください。

そして、料理を撮るときは、何でもかんでも写し込まないことも大切です。一番見せたいものが「お肉」なら、お肉を主役にする。テーブルの上にあるものを全部入れるのではなく、少し整理して、主役を決める。写真は「全部見せる」よりも、「何を見せたいか」を決めたほうが、見る人に伝わりやすくなります。

■4. 人物・集合写真・子ども・ペットの撮影

四つ目は、人物や集合写真、そしてお子さんやペットの撮影です。

・集合写真のコツ

集合写真では、まず「顔が隠れない」ことが大切です。背の高い人は後ろに、低い人は前に。そして、前の人と前の人の間から後ろの人の顔が見えるように、少しずつ位置をずらして並んでもらいます。

また、みんなに「笑ってください」と言っても、なかなか自然な笑顔にはなりません。「せーの、ハッピー!」など、声を出してもらうと、口が自然に動いて笑顔になりやすくなります。

そして、集合写真は一枚だけで終わらせず、同じ構図のまま何枚か連続して撮ることをおすすめします。人数が増えるほど、誰かが目をつぶる確率も高くなります。今のスマートフォンなら、何枚撮ってもフィルムを消費するわけではありません。「100枚撮って、1枚最高の写真が撮れればいい」くらいの気持ちで、どんどん撮っていただいていいと思います。

■お子さんやペットの撮影

お子さんを撮るときには、ぜひ目線を合わせてみてください。大人が立ったまま上から撮るよりも、少しカメラを低くして、子どもの目線に近づけるだけで、表情がずっと生き生きして見えます。

そして、目の中に光を入れることもポイントです。目は小さな鏡のようなものなので、窓や照明などの光が映り込むと、瞳がキラッと輝きます。写真ではこれを「キャッチライト」と呼びます。特別な機材がなくても、自然光をうまく使うだけで、目の輝きを引き出すことができます。

ペットも同じです。名前を呼んだり、おやつや好きな音を使ったりして、こちらに注目してもらう。そして、走っているところや遊んでいるところなど、「動いている瞬間」を撮ってみてください。ワンちゃんは走っているときに耳や毛が風になびいたり、楽しそうな表情をしたりします。そういう一瞬に、その子らしさが出ます。

■イベント撮影時のポイント

最後に、講演会やイベントなどを撮影するときのポイントを一つ。
同じ場所から同じような写真を撮り続けるのではなく、撮る人が少し動いてみてください。

・話している方の表情をアップで撮る
・会場全体を撮る
・参加者が熱心に話を聞いている様子を撮る
・スクリーンと話している人を一緒に撮る
・後ろから会場全体を撮る

このように「引き」「寄り」「横」「後ろ」と視点を変えることで、後から写真を見返したときに、その場の雰囲気がより伝わる写真になります。

■おわりに

今日お伝えしたことを、全部覚えていただく必要はありません。まずは、次に写真を撮るときに、

1.撮りたいところをタップする
2.明るさを調整する
3.スマートフォンを構える高さを変える
4.光を観察する

この4つのうち、一つだけでも試してみてください。

スマートフォンのカメラは、今では本当に性能が良くなっています。だからこそ、機械に全部任せるのではなく、ほんの少しだけ自分の意図を加えてあげる。「何を撮りたいのか」「何を一番見せたいのか」を意識するだけで、写真は大きく変わります。

写真は、記録するためだけのものではなく、そのときの空気や、その人の表情、その場で感じたことまで残してくれるものだと思っています。ぜひ今日から、皆さんの身近な人や、お料理、お出かけ先、そして大切な瞬間を、スマートフォンでたくさん撮ってみてください。

そして、撮った写真の中から「これ、いいな」と思える一枚を見つけていただけたら、フォトグラファーとしてこんなにうれしいことはありません。
本日はありがとうございました。